シリーズ 水害から命を守る その4

避難のタイミング(その2の補足を含む)

とても難しい問題です。
誰もが、最もリラックスできて愛着のある「我が家」から出たくはありません。
ですから、天気予報で大雨が予報され、気象庁が大雨特別警報を出したとしても、「大丈夫、これまでもこれくらいの雨が降ったけれど、大丈夫だった。」と考えてしまいます。
災害から命を守るためには、この「正常バイアス」と戦わなければなりません。

本来、水害時避難は、とても簡単なことです。
天気予報を見ると、数日前から大雨が予報されます。
突然発生する地震とは違い、あらかじめ予想できるのが降雨です。
ですから、避難のことは別にして、「明後日から大雨らしいね」という会話は日常的に行われています。
問題は、その雨が、避難をする必要があるのかどうか、明らかではないこと。
ここでいう明らかとは、「実際に我が家が浸水するのかどうか」という、個人レベルの話です。

でも、これって大切ですよね。
我が家が「明らかに」浸水するならば避難するけれど、そうでない「かもしれない」ならば、家に残る。
ここに「正常バイアス」が働いて、ギリギリまで様子を見ることとになります。
そして、多くの場合は水害が発生せず、「ね、避難しなくても良かったでしょ?」と勝ち誇ったように、自身の判断を賛美することもあるでしょう。
このような状況を、「ただ単に運が良かっただけ」と思えるようになれば、あなたは水害による逃げ遅れで命を失うことはないでしょう。

水害時の避難は早ければ早いほど、安全確実に実施できます。
また、大切なものを可能な限り持ち出すこともできます。
雨が降り続いたならば、様々な手段を駆使して情報を収集しましょう。
ただし、この行為は、自分にとって都合の良い情報を集めることが目的ではなく、災害の発生が予想されているのかどうかを知るための行為です。
そして、一つでも危険が予測される情報があれば、避難を考えなければなりません。
それでも、「まだまだ」と我が家にいたとします。
そんな時でも、いよいよ浸水が始まったならば、もしくは始まりそうならば、あなたは、現在のタイミングで避難できるかどうかを判断することになります。
ここまでくると、覚悟できていますよね。

この段階では、自治体から「避難指示」が出ているかどうか…など、情報収集に時間をかける必要はありません。
*避難勧告は廃止されることになりました
目の前の状況は、あなたが一番正確にわかるはずです。
あなたの家族構成と自宅周辺の状況を頭において、「避難できるかどうか」を判断します。
例えば、道路が冠水している場合、水深が膝よりも上であれば安全に歩くことはできません。
大切なのは、あなたの膝の位置と家族の膝の位置とでは違いがあるということです。
一般的に、成人の膝の高さに水面があるならば、幼児・児童は歩くことはできません。
高齢者は踏ん張りがきかず、少しの水でも転倒するかもしれません。
このように、家族構成によっては、家族全員が一緒に冠水した道路を歩くことはできないかもしれません。だから、早ければ早いほど、安全なのです。
なお、この段階では、全員がライフジャケットを着るべきです。
なければリュックサックや浮輪、ペットボトルなど、浮くものを準備し、身につけてください。

道路が冠水し、安全に歩くことができない場合は、垂直避難を考えます。
2階、3階に避難します。
しかし、昨今の洪水災害をみると、溢れた水の高さが2階より上に来る事例もありました。

我が家の浸水予想はご存じですか?
自治体のホームページ等からハザードマップを取り出し、我が家の浸水予想を確認しましょう。
仮に10mであった場合、2階建て建築物では垂直避難は無理です。
その分だけ、早めに安全な場所に避難しなければなりません。
ハザードマップを見て、浸水のおそれがない場所に行かなければなりません。
親戚や友人を頼る、ホテル等の宿泊施設に泊まる。遠方の温泉旅館に泊まる。

あなたにとって、命を守る行動はどのようなものでしょうか?